「2027年から始まる『こどもNISA』、まだ子どもがいないから関係ない」と感じていないだろうか。
筆者はそう思っていない。
筆者はまだ子どもがいない。これから持ちたいと考えている段階だ。それでも、2027年1月にスタートする「こどもNISA(こども支援NISA)」を強く意識している。理由は、こどもNISAをフル活用するために必要な土台は、子どもが生まれてから整えるのでは遅いと気づいたからだ。もうひとつ、自分自身がいまも奨学金を返している身として、子どもには教育費の後払いをさせたくないという率直な動機もある。
筆者自身は3年前から個人でNISAとiDeCoを月5万円積み立てている。妻はまだNISAもiDeCoも始めておらず、今後の家計設計のなかで妻の新NISAを動かしていく予定だ。1年前には父が入院したことをきっかけに、両親と資産や将来について本気で話し合った。これらの経験を経て、いま「子どもがいない時期こそ、こどもNISA前の最強の準備期間」だと確信している。
本記事では、こどもNISAの制度概要を整理したうえで、子どもがいない・検討中の家庭でも今から進められる3つの土台を、筆者の実体験を交えて解説する。
こどもNISAとは何か:制度の全体像
こどもNISAは、0歳から17歳の子どもを対象とした非課税投資制度だ。金融庁とこども家庭庁が連携して制度設計を進めてきたもので、2025年12月19日に発表された「令和8年度税制改正大綱」で2027年1月開始が決定した。
主なポイントは次の通りだ。
- 対象年齢:0歳から17歳までの子ども名義で口座開設可能
- 年間投資上限:60万円(案)
- 非課税保有限度額:600万円
- 非課税保有期間:無期限
- 投資対象:現行NISAの「つみたて投資枠」対象商品(長期・分散・積立に適した投資信託)に限定
- 引き出し制限:12歳以降、子どもの同意のもとで引き出し可能
18歳に到達した時点で、こどもNISA口座は自動的に成人向けNISAへ移行し、年間投資枠は360万円・生涯非課税保有限度額は1,800万円に拡大される。子どもが大人になったとき、すでに数百万円規模の非課税枠が育っている状態を作れる、というのが最大の特徴だ。
新NISA本体の制度設計を整理しておきたい方は、新NISAの始め方を5ステップで解説した記事もあわせて読んでほしい。
ジュニアNISAから何が変わったのか
過去のジュニアNISA(2023年末で新規投資終了)との違いは3点だけ押さえれば十分だ。①12歳以降は子どもの同意のもと引き出し可能(旧制度は原則18歳まで不可)、②投資対象はつみたて投資枠の投資信託のみ、③非課税期間は無期限。細かい仕様は金融庁の公式情報が最も正確なので、本記事では「親側が先に整えておくべき土台」に紙幅を使う。
土台①:家計管理を完成させる
筆者が3つの準備の中で最も重要だと考えているのがこれだ。
理由はシンプルで、家計管理(支出と収入の把握)ができていない状態では、長期の資産形成は構造的に成立しないからだ。
毎月いくら入って、いくら出ているのか。固定費・変動費・娯楽費がそれぞれ何円か。これを把握できていない状態で、こどもNISAに月5万円を回す判断はできない。仮に始められたとしても、家計が圧迫された瞬間に積立を止めてしまう。
筆者はマネーフォワード ME(支出の自動把握)とSBI証券アプリ(積立状況の確認)の2本立てで家計を管理している。「今の生活のままで目標金額まで何年かかるか」が見えると、こどもNISAに月いくら回せるかを判断できる。家計管理や積立額の具体的な決め方は 新NISAの積立額の決め方 や マネーフォワードME 3年レビュー にまとめているので、ここでは深入りしない。
家計管理と聞くと「余裕がある人の話」に聞こえるかもしれないが、筆者の家計には返済中の奨学金がある。月1万5,000円、残りおよそ77万円・51回。それでも月5万円の積立と両立できているのは、収支を把握して「返済と積立を同時に払える設計」にしてあるからだ。「返済があるから積立は無理」ではなく、両方を家計に組み込めるかどうかは管理の問題——これが返済当事者としての実感だ。
大事なのは、子どもがいない今のうちに「夫婦で月いくらまで積み立てられるか・教育資金にいくら回せそうか」を試算しておくこと。筆者は教育費の総額を、世間の平均データを参考に「高校までは公立、大学は私立」という高くつく側の想定で見積もっている。実際が公立で済めばそのまま余裕になり、逆の見積もりだと設計ごと崩れるからだ。ここが定まっていれば、いざ妊娠・出産のタイミングで慌てずに済む。
土台②:自分の新NISA・iDeCoを先に動かしておく
こどもNISAは、親自身の資産形成が走っている上で初めて意味を持つ制度だ。
なぜなら、子どもの非課税枠を満額埋めることに意識が向きすぎて、自分たちの新NISA枠が手付かず、というのは本末転倒だからだ。生涯1,800万円の親自身の非課税枠は、子どもの600万円より遥かに大きい。
筆者は3年前から個人で、新NISAとiDeCoに月5万円積み立てている。商品はインデックスファンド(全世界株式とS&P500)で、家計のキャッシュフローに合わせて無理のない金額に設定した。妻のNISAはこれから始める予定で、夫婦の枠としてはまだ片肺運用の段階だ。
3年続けて気づいたのは、早く始めるほど「複利の時間」が長く取れるという当たり前の事実だ。こどもNISAが始まる2027年からあと2年弱。この時間をフル活用すれば、子どもの非課税枠が育つ前に、親側の運用が安定軌道に乗る。
新NISAとiDeCoの違いと使い分けについては、新NISAとiDeCoを比較した記事で詳しく解説している。
「商品選びで悩んで始められない」のが一番もったいない状態だ。完璧な選択を目指すより、月1万円から動き出すことを優先したい。
土台③:親世代と資産・将来の対話をしておく
これが筆者にとって、最も意外な「こどもNISAの準備」だった。
きっかけは1年前、父が入院したことだ。突然のことで、両親の資産・実家の維持費・親自身の老後の希望について、それまで何も知らなかったことに気づいた。
入院がきっかけで、両親と本気で話し合った。話したのは次のようなことだ。
- 両親の貯蓄・年金・住居費など、現状の家計
- 介護や施設入所が必要になったときの希望
- 自分(筆者)への遺産についての考え方
筆者から両親には、「自分の資産形成の目標は自分で達成するから、遺産は残さずに使い切ってほしい」と伝えた。同時に、「もし将来資金が足りなくなった場合は、援助するつもりでいる」とも。
この対話のあと、筆者は自分の老後資金について両親と完結しているという前提で家計設計ができるようになった。だからこそ、これから生まれてくる子どものこどもNISAに、安心して家計の比重を寄せられる。
なぜ子どもがいない今やるべきか
両親との金銭的な対話は、子どもが生まれてからやろうとすると体力的に難しい。育児で消耗している時期に、親と「お金と将来」の重い話をする時間は取れない。
子どもがいない・余力のあるこの時期にこそ、両親と一度しっかり話しておくことを強く薦めたい。「親の老後は親で完結する」のか「ある程度自分が支える前提で家計を組むのか」が決まると、こどもNISAに回せる金額の上限がハッキリする。
これは制度の話ではなく、家族のお金の対話の話だ。けれどこの土台がないと、こどもNISAは「子どもへの投資」と「親世代の介護費」に挟まれて、いつ撤退するかわからない不安定な積立になってしまう。
まとめ
- こどもNISAは2027年1月スタート。0歳から17歳まで、年60万円・累計600万円の非課税投資が可能
- ジュニアNISAから引き出し制限が緩和され、つみたて投資枠商品に絞られた実用的な制度
- 18歳到達で成人NISAへ自動移行し、生涯1,800万円の非課税枠へ接続される
- 土台①:家計管理を完成させる。マネーフォワード+証券アプリで「目標到達までの年数」が見える状態にする
- 土台②:自分の新NISA・iDeCoを先に動かす。少額でも始めて、複利の時間を確保する
- 土台③:親世代と資産・将来の対話をしておく。子どもがいない今だからこそできる重い対話
2027年スタートまでは、まだ時間がある。「制度が始まってから準備する」のではなく、子どもがいない今こそ、3つの土台を整える最強の準備期間として使ってほしい。
筆者は、こどもNISAが始まる頃には、家計と運用と親世代との対話の3つが整っている状態を目指している。あなたの家庭ではどうだろうか。
免責事項:本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。投資には元本割れのリスクがあり、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。制度の詳細は今後変更される可能性があります。最新情報は金融庁・こども家庭庁の公式発表および証券会社の公式サイトをご確認ください。