「利回り6%」と書かれた銘柄を見つけたとき、あなたはどう感じるでしょうか。
数年前の私なら、迷わず「お得だ」と思って買っていました。配当利回りが高いほど、もらえる配当金が多くて良い会社——そう単純に考えていたのです。
でも実際に自分で多くの銘柄を調べていくと、利回りが異常に高い会社ほど、危ない橋を渡っていることがあるとわかってきました。利回りの高さは「質の高さ」ではありません。ときには「株価が落ちた結果」だったり、「利益以上に無理して配当を出している」サインだったりします。
筆者は投資3年目のビジネスパーソンで、副業でこのブログ「Gorilla LABO」を運営しています。高配当株に興味を持ったきっかけは、両学長(リベ大)の動画でした。その後、配当太郎さんの本などで学びを深め、今は自分なりの選び方が固まってきました。最近は東証プライムの355銘柄を、自分で決めた基準で一つひとつ点検する作業もしました。
この記事では、その過程でたどり着いた「利回り以外に見るべき数字」と、財務優良で減配しない会社を見分ける私のチェック項目を、実体験ベースでまとめます。「これから高配当株を始めたい」「利回りランキングの上位から選んでいいのか不安」という、数年前の私と同じ人に向けて書きました。
なお、この記事は個人の投資記録と考え方の共有であり、特定の銘柄を勧めるものではありません。最終的な判断はご自身で行ってください(詳しくは記事末尾の免責事項をご覧ください)。
まず「利回りの相場感」を持つ——高すぎる利回りは黄色信号
高配当株を選ぶ前に、絶対に持っておきたいのが「利回りの相場感」です。基準がないと、6%や8%という数字が「すごくお得」に見えてしまうからです。
日本取引所グループ(JPX)が公表している株式平均利回りの統計を見ると、東証プライム市場全体の平均配当利回りは、おおむね2%台で推移しています。つまり、市場の”ふつう”は2%前後だということです。
私はこの相場感をふまえて、「予想配当利回り3.75%以上」を高配当株の入口ラインにしています。市場平均のおよそ1.5倍以上ですね。ここが「高配当と呼んでよいゾーン」の目安です。
一方で、7%、8%、あるいは二桁というような利回りは、素直に喜ぶより先に「なぜそんなに高いのか」を疑うようにしています。理由はだいたい次のどれかです。
- 業績が悪化して株価が大きく下がった結果、見かけの利回りだけが跳ね上がっている
- 記念配当や特別配当など、一度きりの上乗せが含まれている
- 利益が細っているのに配当を据え置いていて、近いうちに減配される可能性がある
利回りは「その銘柄に興味を持つ入口」としては便利です。でも、利回りの数字そのものは、会社の良し悪しを何も保証してくれません。利回りは入口、中身の確認は別物——これが出発点です。
私が探しているのは「減配せずに配当を出し続ける会社」
では、どんな会社を選びたいのか。私の答えははっきりしています。
財務が優良で、減配せずに配当を出し続けてくれる会社。そして調子が良ければ増配もしてくれるような会社です。
高配当株の一番の敵は、株価の一時的な下落ではありません。減配です。配当を目当てに買ったのに、その配当が減らされてしまえば、投資の前提そのものが崩れます。しかも減配が発表されると、株価まで大きく下がることが多い。「配当が減る」と「株価が下がる」のダブルパンチを食らうわけです。
だから私は、「利回りが高い会社」ではなく「配当を守り抜く力がある会社」を探しています。少しくらい利回りが控えめでも、10年、15年と減らさずに配当を出し続けてくれる会社のほうが、私にとってはずっと魅力的です。
この考え方は、インデックス投資で暴落に耐えるのと似ています。詳しくは「ゴリラ握力」で15年握り続けるNISA運用術にも書きましたが、長く持つことを前提にするなら、選ぶ段階で「持ち続けられる会社かどうか」を見極めておくことがすべての土台になります。
利回り”以外”に見ている数字——まずは全体像
では、減配しない会社をどう見分けるのか。正直に言うと、私が利回りのほかにチェックしている数字は10種類近くあります。まずは「どんな数字を見ているのか」を、ざっと全体像として紹介します。
(数が多いので、ここは「へえ、こんなに見ているんだ」くらいの気持ちで読み飛ばしてもらって大丈夫です。このあと、その中でも特に大事な4つに絞って詳しく説明します。)
会社の「稼ぐ力」を見る数字
- 営業利益率:売上のうち、本業でどれだけ利益を残せているか。高いほど商売がうまい会社です
- EPS(1株当たり利益):株1株あたりの利益。これが年々伸びている会社は、着実に成長しています
- ROE(自己資本利益率):株主から預かったお金を使って、どれだけ効率よく利益を生んでいるか
会社の「財務の安全性」を見る数字
- 自己資本比率:会社の全財産のうち、返さなくていい自分のお金の割合。高いほど不況で倒れにくい
- 有利子負債:利息を払って借りているお金。多すぎる会社は、景気が悪くなったときに弱い
株価が「割安か割高か」を見る数字
- PER(株価収益率):株価が1株の利益の何倍まで買われているか。人気で高くなりすぎていないかの目安
- BPS(1株当たり純資産):株1株の裏に、どれだけの資産が積み上がっているか。株価の下支えになります
これらを一通り見て、「財務がしっかりしていて、無理なく配当を出し続けられそうか」を総合的に判断しています。数字の意味がまだピンとこなくても心配いりません。大事なのは「利回りという1つの数字だけで決めない」という姿勢そのものです。
ただ、初めての人がこれを全部いきなり追いかけるのは大変です。そこで、「減配を避ける」という一点に絞るなら、私が特に大事にしているのは次の4つです。ここからはこの4つを、意味も含めて丁寧に説明します。
特に大事にしている4つの数字——減配を避けるための本命
「無理していないか」を判断する物差しとして、私がとりわけ重視しているのがこの4つです。専門用語のように見えても、意味さえわかれば難しくありません。
① 配当性向——利益の何割を配当に回しているか
配当性向は、会社が稼いだ利益のうち、何割を配当に回しているかを示す数字です。
例えば配当性向が30%なら、利益の3割を配当に、残り7割を会社に残していることになります。これは健全です。ところが配当性向が80%、90%と高くなると、「利益のほとんどを配ってしまっていて、余裕がない」状態になります。
一番の危険信号が配当性向100%超。これは利益よりも多くの金額を配当に出している状態で、その配当は長続きしません。実際、私が355銘柄を点検したとき、配当性向が100%を超えている会社が約30社もありました。利回りだけ見れば魅力的に映る銘柄が、この基準でごっそり脱落したのです。
私の目安は、配当性向30〜50%くらいが健全。ここなら増配の余力も残っています。逆に70%を超えたら「増やす余地は少ないな」と慎重に見ます。
② 営業キャッシュフロー——本業でちゃんと現金を稼げているか
営業キャッシュフローは、本業でどれだけ現金を稼いだかを示す数字です。利益は会計上の計算で膨らませることもできますが、現金の出入りはごまかしにくい。だから私はここを重視します。
チェックの仕方はシンプルで、「営業キャッシュフローが毎年しっかりプラスか」を見ます。過去10年をさかのぼって、営業キャッシュフローが赤字になった年が何度もある会社は、本業の稼ぐ力にムラがあるということ。そういう会社は候補から外します。
逆に、リーマンショックやコロナのような苦しい時期を含めても、営業キャッシュフローがずっと黒字だった会社は、本業が強い証拠です。
③ 減配の歴史——過去に配当を減らしたことがあるか
これは意外と見落とされがちですが、過去に減配したことがあるかは必ず確認します。
一度減配した会社は、次の不況でもまた減配する可能性があります。逆に、リーマンショックもコロナも乗り越えて、一度も配当を減らさなかった会社は、経営陣の「配当を守る」という覚悟が本物だと考えられます。
私は10年ほどさかのぼって、配当の推移を見ます。ずっと横ばいか、少しずつでも増えているのが理想。逆に、業績が苦しい年にスパッと配当を切った履歴がある会社は、評価を下げます。「調子が良ければ増配、苦しくても減配しない」——これが私の理想の会社像です。
④ 配当を「稼いだ現金の範囲」で払えているか
最後は少し上級ですが、大事な視点です。会社が配当を、借金ではなく自分で稼いだ現金の範囲で払えているかを見ます。
利益が出ていても、その利益が実際の現金として入ってきていなければ、配当の原資は借金や貯金の取り崩しかもしれません。稼いだ現金(キャッシュフロー)に対して配当が多すぎる会社は、「無理して配っている」可能性があります。
これも355銘柄を点検して痛感したことで、利益ベースの配当性向は問題なくても、現金ベースで見ると配当を賄えていない会社が意外と多くありました。①〜③をすり抜けた銘柄も、この視点で見ると危うさが見えてくることがあります。
この4つを、利回りとは別の物差しとして見る。利回りは「入口」、この4つが「本命の審査」です。順番を間違えて、利回りの高さで先に飛びついてしまうと、減配の罠にはまります。
手書きノートからAIへ——1銘柄ずつの確認をどう効率化したか
ここからは、私自身の一番リアルな体験です。
最初、私はこの確認作業を手書きのノートでやっていました。気になった銘柄を一つずつ調べて、「配当性向○%、営業キャッシュフローは安定、減配歴なし」といったメモを取り、○△×で評価していく。地道な作業です。
ところが、調べたい銘柄が増えてくると、この手作業が限界になりました。一つの銘柄を丁寧に見ようとすると、複数の資料をいくつも開いて数字を拾わなければなりません。それを何十、何百と繰り返すのは、副業として時間の限られた私には現実的ではありませんでした。
そこで、進化してきたAIに、この作業を手伝ってもらえないかと試してみることにしました。ポイントは、判断基準(チェック項目)は自分で決めるということ。①〜④で挙げたような「私が良いと思う条件」をルールとして言葉にして、そのルールに沿った点数付け(スクリーニング)をAIに任せたのです。
今の私のやり方は、こんな流れです。
- 自分で決めた基準で、AIにスクリーニングを任せる(多くの銘柄を一気に点数化してもらう)
- 評価の高い銘柄を、自分の目で改めて確認する
- 確認して納得できる良い銘柄なら、購入候補のリストに入れる
- もし微妙な銘柄が上位に選ばれていたら、条件のほうを微調整する
大事なのは、AIはあくまで集計と計算の手間を省いてくれる道具だということです。「どんな会社が良いか」を決めるのも、最後に「この会社を候補に入れるか」を判断するのも、自分自身。1銘柄ずつ手で確認していた膨大な手間を大きく減らしつつ、判断の主導権は手放さない——ここが肝です。
この過程で、自分の基準そのものも磨かれていきました。一番大きな変更点は、「利回りの高さ」を評価点そのものからは外したことです。最初は利回りが高いほど点数を上げていたのですが、点検を重ねるうちに「利回りが高い=良い会社、ではない」と痛感したからです。利回りは”買い時を測る別の物差し”として切り離し、評価の本体は財務の健全さと配当を守る力に絞りました。
「測る→検証する」を繰り返して基準を育てていく感覚は、私がダイエットで体重を毎日記録してきたのと同じでした。数字で測り、結果を見て、やり方を調整する。健康も資産も、続く仕組みの作り方は驚くほど似ています(この考え方は健康と資産は同じ仕組みで育つにも書きました)。
それでも最後は「自分で納得して買う」
ここまで選び方の話をしてきましたが、私が一番伝えたい結論は、実はもっとシンプルです。
他人のおすすめを、そのまま鵜呑みにして買わないこと。
投資は自己責任です。どんなに信頼できる人のおすすめでも——それがプロでも、有名な投資家でも、AIが高評価した銘柄でも——自分で確認して、腹落ちしてから買うべきだと私は考えています。
理由は、私自身の心理を振り返ってわかったことです。自分で納得せずに買った銘柄は、いざ暴落が起きたときに、怖くなって売ってしまいやすい。そして「あの人のおすすめだったのに」と、他人のせいにしてしまう。これでは投資は続きません。
逆に、自分で数字を確認して「この会社なら配当を守ってくれるはずだ」と納得して買った銘柄は、株価が下がっても持ち続けられます。納得は、暴落に耐える握力になるのです。
だから、この記事で紹介したチェック項目も、「私はこう見ている」という一つの参考にすぎません。あなたにはあなたの基準があっていい。大事なのは、誰かの結論をコピーするのではなく、自分の物差しを持つことです。私が高配当株とインデックスの両方を試して出した結論も、あくまで私の場合の話です(NISA初心者が最初に迷う「高配当株 vs インデックス」にまとめています)。
まとめ
高配当株の選び方について、私のチェック項目を整理します。
- 利回りの相場感を持つ:東証プライムの平均は2%台。私は3.75%以上を高配当の入口ラインにし、7〜8%超はむしろ「なぜ高いのか」を疑う
- 探すのは「減配しない財務優良な会社」:利回りの高さではなく、配当を守り抜く力を見る
- 利回り以外の数字を総合で見る:営業利益率・EPS・ROE・自己資本比率・有利子負債・PER・BPSなど、稼ぐ力/財務の安全性/株価の割安度を一通り確認する
- その中でも特に大事な4つ:①配当性向(30〜50%が健全・100%超は危険)②営業キャッシュフロー(毎年黒字か)③減配の歴史(不況でも減らさなかったか)④稼いだ現金で配当を賄えているか
- AIは道具、判断は自分:基準は自分で決め、スクリーニングを任せ、評価の高い銘柄は自分の目で確認する。微妙な銘柄が選ばれたら条件を調整する
- 最後は自分で納得して買う:他人のおすすめを鵜呑みにしない。納得こそが暴落に耐える握力になる
利回りの数字は、あくまで入口の目印です。その先で「この会社は配当を守り続けられるか」を自分の物差しで測る——その一手間が、減配の罠を避け、長く付き合える高配当株にたどり着く近道だと、私は考えています。
まだ高配当株そのものがピンとこない方は、先に高配当株とは?初心者向けに「配当で暮らす」投資をやさしく解説を読んでいただくと、この記事の内容がよりつながると思います。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の投資・金融商品を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任のもと、必要に応じて専門家にご相談の上で行ってください。
参考資料
- 日本取引所グループ(JPX)「株価平均・株式平均利回り」 https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/03.html
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト」 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/